菜蔬さいそ)” の例文
朝夕の飯米菜蔬さいそ、我食うべきものをこじきにほどこし、その身は主家の残れると、または流しの隅に網を釣りてたまりし物を
菜蔬さいそは最も莱菔だいこんを好んだ。生で食うときは大根だいこおろしにし、て食うときはふろふきにした。大根おろしは汁を棄てず、醤油しょうゆなどを掛けなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
つらつらおもふに我国の料理ほど野菜に富めるはなかるべし。西洋にては巴里パリーに赴きて初めて菜蔬さいそあじわい称美すべきものにふといへどもその種類なほ我国の多きに比すべくもあらず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
夫の留守中何事もおこたりがちなりければ、裏のはたけ大葱おおねぎの三四茎日に蒸されてえたるほか、饗応きょうおうすべきものとては二葉ばかりの菜蔬さいそもなかりき、法事をせずば仏にも近所にも済まず
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
炭三両二分ばかり、大根漬一両三分ばかり、菜蔬さいその料家具の料十四、五両、衣服の料また十七、八両、普請ふしんの料六、七両、給金きゅうきん八、九両、地代二十二、三両、都合百両余を費すべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
金帛きんはくを以て謝することの出来ぬものも、米穀菜蔬さいそおくって庖厨ほうちゅうにぎわした。後には遠方からかごを以て迎えられることもある。馬を以てしょうぜられることもある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)