荒行あらぎょう)” の例文
文覚もんがくとかいって、去年こぞの秋、熊野権現に、百日荒行あらぎょうの誓願を立てて、毎日、那智なちの滝つぼで、滝に打たれていたとか、申すことですが
と社長は猿臂えんぴを伸した。僕はもう少しで数珠で打たれるところだった。何うも仏教が荒行あらぎょうになって来ると思った。
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
謀叛僧文覚もんがく荒行あらぎょうをやった那智なち大瀑おおだき永久えいきゅうみなぎり落つ処、雄才ゆうさい覇気はきまかり違えば宗家そうかの天下をひともぎにしかねまじい南竜公なんりゅうこう紀州きしゅう頼宣よりのぶが虫を抑えて居た処
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし、それもまあ身体に準じたもので、無茶に荒行あらぎょうをやるのも感心しませんな。あんた方なんぞはまだ若いで、少しぐらい無理をしても修行が肝腎かんじんですな。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
清吉も近来はよほど丈夫になったと人も云い、自分もそう信じているのですが、土台の体格が孱弱かよわく出来ているのですから、とても刺青などという荒行あらぎょうの出来る身体ではない。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
荒行あらぎょうでいささか疲労した体を、休ませていただくことにいたしましょう」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
犬鳴山の行場ぎょうじょうへ籠ったのは翌年の三月一じつのことであるが、その山へこもるようになったのは前年の十月に霊夢を感じて仙術の修練に志したがためであった。犬鳴山では毎日滝にうたれて荒行あらぎょうをした。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その時分こそすたったけれども、その以前は、この滝にかかってかなりの荒行あらぎょうをしたものさえあるとのことだから、隠れて行をする信心の行者を妨げるのを恐れ多いとして、やはり噂を噂だけにして
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)