茫然自失ぼうぜんじしつ)” の例文
ある者は茫然自失ぼうぜんじしつし、ある者は鍵束を床へ投げつけ、あるものは夢かと驚喜し、楽隊はためらい、万年大学生は「新生活の首途」を祝う。
いかに疲労その極に達したとはいえ、再びイエス様に呼び起こされて、彼らはあまりのふがいなさに茫然自失ぼうぜんじしつしてお答えする言も知らなかった。
なにかさけぼうとしたくちびる上下じょうげにゆがんだが、いう言葉さえ知らぬように、はなあなをひろげたまま、アングリと口をあいて茫然自失ぼうぜんじしつのていたらく……。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
音に聞く都の島原を、名にゆかしき朱雀野すざくののほとりに訪ねてみても、大抵の人は茫然自失ぼうぜんじしつする。家並やなみは古くて、粗末で、そうして道筋は狭くて汚ない。
だが、恐怖と困惑とに、茫然自失ぼうぜんじしつしてしまった甚太郎に、横山五助はいつまでもかかり合ってはいなかった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
彼が病気のくせに『きょう家を飛び出して行った』と聞いた時、二人は驚きのあまり茫然自失ぼうぜんじしつした。話の模様でみると、必ず熱に浮かされてるに決まっている。
わたしはちらりとかれの顔を見たばかりで、相変らず茫然自失ぼうぜんじしつのていで突っ立っていたが、その間に令嬢はまた椅子の上に飛び乗ると、またもや帽子を揺すぶり始めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
人々は余りの意外な出来事に、空を見上げたまま、茫然自失ぼうぜんじしつていであった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
嗟呼あゝ。』とさけんだまゝわたくし日出雄少年ひでをせうねん其他そのた水兵等すいへいら茫然自失ぼうぜんじしつした。
彼女はまったく茫然自失ぼうぜんじしつのありさまで、豪奢ごうしゃな部屋を通り、着飾った人々のあいだをぶらぶら歩いてゆき、とうとう奏楽席の階段に腰かけて、しばらくあたりを見まわしていたが、眼はうつろで
傷心 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
「いいや、茫然自失ぼうぜんじしつだ」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)