苧環をだまき)” の例文
銀の如き髮の解けたるが、片頬にちかゝりて、褐色なる頸のめぐりに垂るゝを見る。その墨の如き瞳は、とこしへに苧環をだまきの上に凝注せり。
その歩々ほほおとせし血は苧環をだまきの糸を曳きたるやうに長くつらなりて、畳より縁に、縁より庭に、庭より外に何処いづこまで、彼は重傷いたでを負ひて行くならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
牡丹ぼたん匂阿羅世伊止宇にほひあらせいとう苧環をだまきの花、むすめざかりの姿よりも、おまへたちのはうがわたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
すみれ苧環をだまき、櫻草、丁字草ちやうじさう五形げんげ華鬘草けまんさうたぐひは皆此方にゑて枕元を飾るべし。
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
とこしへに解かむすべなし苧環をだまきのあまたはあれど手にもとれねば
長塚節歌集:3 下 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
梭を手にとり、縱糸の上に苧環をだまきはしらする
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
苧環をだまき成人おとなびてゐないのが身上しんじやうの女學生、短い袴、ほそあし、燕の羽根はねのやうに動くうで
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
春の花には苧環をだまき遊蝶花いうてふくわ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)