苛苛いらいら)” の例文
或る朝は偏頭痛へんとうつうを感じてふでる氣力もなく、苛苛いらいらしい時を過した。それ等は私にとつては恐らく一生忘れがたところの、産みの苦しみだつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ゆき子はあかくなつてその男に挨拶を返したが、部屋を出て行つたきり、一向に戻つて来る気配もない様子に、苛苛いらいらしてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
たとえば足の一部を払っている間に、こんどは頬のあたりを刺して来たりして、苛苛いらいらしい、しかしどうにもならない苦しさを感じるのであった。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
多くの人人が、たれも経験するところの、あの苛苛いらいらした執念の焦燥が、その時以来きまとつて、絶えず私を苦しくした。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
弱し、顫へたり、蒼ざめたり、不安なり、苛苛いらいらし。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
みんなの神経は苛苛いらいらとしてゐるけれど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
我心苛苛いらいらしさに
室内 (新字旧仮名) / 渡久山水鳴(著)
そして、筆は遲遲ちちとして進まず、意をたすやうな作は出來上らずに、いたづらにふえて行くのは苛苛いらいらと引き裂き捨てる原稿紙のくづばかりであつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれは髪のなかに手をつッ込むような苛苛いらいらしい気持になって考え沈むのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
細身の刄先はさき苛苛いらいら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)