ごけ)” の例文
清浄な檜林ひのきばやしを見つけた。わしは老母おふくろ空骸なきがらを千年ごけの下に埋めた。くわは近くの小挽こびき小屋から借りて来たものだった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはたぶん複眼の多数のレンズの作用でちょうどひかごけの場合と同じような反射をするせいと思われる。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水はどろりとして薄黒く、浮きごけのヤリが流れる方向もなく点々と青みが散らばってちょうどたまり水のような濁り水の上を、元気なくゆらりゆらりと漕いでゆくのである。
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
金蜘蛛きんぐも銀蜘蛛ぎんぐもといふ、とくべつな蜘蛛の糸はもちろんのこと、その外に月の光り、蚕からとつた、それは/\柔かい生糸、魔術の井戸水にひたして色のさめないやうにした花びら、もうせんごけ
虹猫と木精 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
みづごけのうへをすべる朝のそよかぜのやうなあなたのこゑも
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
広庭ひろには天鵞絨びろうどごけにうづもりて道をたばさむ杉苔すぎごけ草苔くさごけ
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
これは多分複眼の多数のレンズの作用で丁度ひかごけの場合と同じような反射をするせいと思われる。
烏瓜の花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)