艶種つやだね)” の例文
旧字:艷種
有喜世新聞社では一種の艶種つやだねと見過して、その以上に探訪の歩を進めなかったらしく、単にそれだけの事実を報道するにとどまっていた。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今の都新聞に掲載されてゐる三面の艶種つやだねの記事、毎日一つづゝ巧に書いてある花柳種の記事、あゝした気分が西鶴の文章の何処かにある。
西鶴小論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
梅龍の姉は大學生の親切が元で思はぬ戀に落ちたといふ風な極古風な艶種つやだねであつたが、梅龍はいつも「まさか。」と言つて、否定するのである。
梅龍の話 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
「さあ話すがいい。お前の艶種つやだねを、女のことをすっかり私に言ってしまいなさい。どうも、若い者ときたら仕方がない。」
お糸さんの用事つてのはつまらないことであつた。品川のある小新聞社の社員が艶種つやだねを売りに来たので、少しばかりの金を「桔梗」のおかみがくれてやつた。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
四十何歳かの某夫人と「おいらくの恋」とやらをして新聞や雑誌に艶種つやだねを提供し、大いに世間を騒がしたことはなおわれ/\の記憶に新たなところである。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
時としては艶種つやだねが二面の下から三面の冒頭あたまへ続いて居る様な新聞だつたのが、今では全紙すつかり総ルビ付で、体裁も自分だけでは何処へ出しても恥かしくないと思ふ程だし
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そうか、入れ入れ、今日は雪もないのに、この女からせがまれて雪見だ。貴様、なかなかの色男だという評判だが、何か艶種つやだねがあるなら語って聞かせろ。それ——」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
フラゴナールのすり切れたシャツ、すべてそれらの詩的な肉体美も、世間の艶種つやだねを満載している新聞紙にたいするくらいの興味をしか、クリストフには与えなかった。
名高いカフェーゴロ、顔の古い艶種つやだね記者、不良老年、壮士の頭目、主義者のチャキチャキなぞが、午後の或る時間になるとズラリと顔を揃える。駈け出しの不良なぞはそれと知ったら縮み上る。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
有喜世新聞社では一種の艶種つやだねと見過ごして、その以上に探訪の歩を進めなかったらしく、単にそれだけの事実を報道するにとどまっていた。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「何か艶種つやだねでしょう。」
七 ある艶種つやだね