色慾しきよく)” の例文
そのあやふきふんで熊を捕はわづか黄金かねため也。金慾きんよくの人をあやまつ色慾しきよくよりもはなはだし。されば黄金わうごんみちを以てべし、不道をもつてべからず。
かれは今、世阿弥の残した秘財と、美しいその息女とに、色慾しきよく二道ふたみちかけて、さまざまな画策かくさくをやりぬいている最中だ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはあなたがたおもふやうに、いやしい色慾しきよくではありません。もしそのとき色慾しきよくほかに、なにのぞみがなかつたとすれば、わたしはをんな蹴倒けたふしても、きつとげてしまつたでせう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
○此地の人すべて篤実温厚とくじつをんこうにして人とあらそふことなく、色慾しきよくうす博奕ばくえきをしらず、酒屋なければ酒のむ人なし。むかしよりわら一すぢにてもぬすみしたる人なしといへり。じつ肉食にくしよく仙境せんきやう也。