色代しきたい)” の例文
「信孝様さえ、下馬して色代しきたいされたのに、駕籠のままで通るとは不遜ふそん極まるやつだ。——猿めが、もう天下でも取ったように心得おるか」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、でっぷり肥ったる大きな身体を引包む緞子どんすはかま肩衣かたぎぬ、威儀堂々たる身を伏せて深々と色代しきたいすれば、其の命拒みがたくて丹下も是非無く、訳は分らぬながら身を平めかしらを下げた。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
優しい色代しきたいをした呉羽之介が、名乗ろうとするのを片里はおさえて
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
巻絹十ぴき、砂金一のう、酒一、大鯛一台などの品々を供にになわせて、そのお使者は、女輿おんなごしを中門で降り、色代しきたいうやうやしげに——若殿さま御婚礼のお祝いに
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の輿こしは、ほどなく佐女牛さめうしの宏壮な邸内へ入っていた。師直は、みずみずと打水された前栽せんざいを見、家臣一同の色代しきたい(出迎え)をうけ、のっしのっしと、奥殿へ通って行った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たれとも久しぶりよ。しかしここでは、いちいちの色代しきたい会釈えしゃくもならぬ。あとで、後で」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左右から、こう色代しきたいしているまに、信長は、拭き磨いてある廻廊を、つつつと足を早め
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっそく、一色刑部が郷党を代表して、馬前の色代しきたい(あいさつ)を高氏のまえにした。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)