船舷ふなべり)” の例文
船舷ふなべりに頬杖を突いて一眠りした蒔蔵はしびれたような疲れもすっかりなおった。やる瀬ない気持ちだけが残った。
百喩経 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おりる時には今にも奈落の底へ墜入おちいりますかと思う程の有様で、実に山三郎もとてももういかんと心得ましたから、只船舷ふなべりつかまって、船の沈んではならんとあか掻出かいだすのみで
国芳画中の女芸者は濃く荒く紺絞こんしぼり浴衣ゆかたの腕もあらはに猪牙の船舷ふなべりひじをつき、憎きまであだツぽきそのおとがいささへさせ、油気あぶらけ薄きびんの毛をば河風の吹くがままに吹乱ふきみださしめたる様子には
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
顎十郎は、船舷ふなべりへだらしなく頬杖をついて
伴「そうですねえ、船舷ふなべり煙管きせるを叩くと雁首がんくびが川の中へ落っこちて困るもんですねえ」