自棄じき)” の例文
中田なかだは、なぜそんなところへ行ったのか、我ながらハッキリとした憶えはないのだが、すべてに、あらゆるものに、自棄じきを味わった彼は
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
宗助そうすけこの一語いちごなかに、あらゆる自暴じばう自棄じきと、不平ふへい憎惡ぞうをと、亂倫らんりん悖徳はいとくと、盲斷まうだん決行けつかうとを想像さうざうして、是等これら一角いつかくれなければならないほど坂井さかゐおとうと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
清原 (自棄じき的に)僕はもう嫌になっちゃったんだ! もう僕あ、こんな大それた計画からは手を引きたくなったんだ!……ねえ、そうだろうじゃないか、小野。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
その悔悟も熱心もついに多くの罪人等の自棄じきに陥る道に到るべきことを見出したるに外ならず候。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いっそ門のそとまで出て愉快に自分のほうからむかえてやろう。あとはあたってくだけるまでのことだ。——かれは冒険ぼうけんとも自棄じきともつかない気持ちで、自分自身をはげましたのだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しかしてあらかじめこれに備うべくあまり自棄じきである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)