腹蔵ふくぞう)” の例文
旧字:腹藏
と、官兵衛は単刀直入にいって、まずその人の腹蔵ふくぞうをたたいてみた。うす笑いを浮べながら政職は聞いていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
腹蔵ふくぞうのないところをいうと、どうなりとあなたの好きなお返事を致しますというのが彼の胸中であった。けれども夫人の頭にあるその好きな返事は、全く彼の想像のほかにあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その腹蔵ふくぞうのない態度にわたしは衷心ちゅうしんから感謝し、また、わたしの希望に対して紳士的の許可をあたえてくれたことをも感謝して、わたしは自分の望むものを手に入れることになった。
腹蔵ふくぞうなく大笑おおわらいをするので、桂木は気を取直とりなおして、そっづ其のたもとの端に手を触れた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「内藤君、きみは照彦様をどう思いますか? 参考のため腹蔵ふくぞうなく話してください」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
石が大きければ水煙もおびただしいと云った様なもので、傍眼わきめには醜態しゅうたい百出トルストイ家の乱脈らんみゃくと見えても、あなたの卒直そっちょく一剋いっこくな御性質から云っても、令息令嬢達の腹蔵ふくぞうなき性質から云っても
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おそらくこの状況を、はるか中国の遠くにいて、便りに聞いただけでも、秀吉の胸中には、家康のすがたが、従来より一倍大きく腹蔵ふくぞうに据え直されたにちがいない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれの腹蔵ふくぞうを知らない桐井角兵衛は、三位卿の行動を不快に思ったが、みすみす眼八がつきとめてきたものを、悠々と、有村の帰りを待ってはいられないので、かれは彼の独断で
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「心得ぬことを申すではないか。腹蔵ふくぞうなく、そのわけを承ろう」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)