腰紐こしひも)” の例文
「まだたくさん無くなりましたよ。筆、墨、矢立、徳利、お嬢さんの手箱の鍵、用箪笥ようだんすの鍵、お今どんの腰紐こしひも、お万さんのかんざし、お文どんのくし、——」
老女はすなおに起き直った、万三郎は枕元にたたんである(老女の)着物の上から、二た筋の腰紐こしひもを取り、彼女の手を背に廻して縛り、また足を縛った。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
みだれた黒髪や、えりもとや、腰紐こしひもなどを直して、容姿すがたをつくろっていると、城太郎は舌うちして
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
メリンスの腰紐こしひもを三本つないで、リリーの肩からわきの下へ、十文字にたすきをかけて、強くめ過ぎないように、そうかと云ってスッポリ抜けられないように、何度も念を入れて締め直して
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「暑い、暑い。」と腰紐こしひもを取る。「暑いんだもの。」とすらりと脱ぐ。そのしろさは、雪よりもひきしまって、玉のようであった。おきゃんで、りんとしているから、いささかもみだりがましい処がない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)