えら)” の例文
此の節、肉どころか、血どころか、贅沢ぜいたく目玉めだまなどはつひに賞翫しょうがんしたためしがない。鳳凰ほうおうずい麒麟きりんえらさへ、世にもまれな珍味と聞く。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「嘘をおいいなさい。松江の鱸は、かならずえらが四つあります。そのほかの鱸は二つしかありません。見てごらんなさい」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは溺死したかもしれないわ、でもそれはこの実験動物が、目下えらを備えていないために、水中で呼吸が出来ないという構造を持っているためよ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
○鯛その他の魚類を用ゆる時は先ずそのえらを検すべし。赤くして鮮なるは新しき魚なり。曇りたる色は古き魚なり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
えらから荒縄をとおされ烏天狗からすてんぐみたいな口をくわっとあけて鉤なりの歯を見せている。頭は焼物のように黒くてらつき、体は赤黒く光沢をおびて、美しいというよりは野趣のある魚である。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
えら洗ひといふものは素晴らしく、釣り上げてからも一尾四五円の価値がある。
夏と魚 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
「そう、銀ひげえらを持ってる人を除いてはね。」とトロミエスが言った。
えらが動く、目が光って来た、となると、擬勢は示すが、もう、魚の腹をなぐりつけるほどの勇気も失せた。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひれをひらき、えらをふくらし出来るだけ跳躍を試る。
夏と魚 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
片手おろしにうろこを両面にそいで、はじめて袖口から白い手を出して、えらおさえて、ぎりりと腹を。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つかみかけた大魚えらから、わが声に驚いたように手を退けて言った。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)