脊柱せきちゅう)” の例文
国境の山の線を、のろいにみちたひとみがじっと振り仰いだ、もうその辺りの中国山脈の脊柱せきちゅうは灰色の夕雲に、まだらになって黒ずんでいた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神経衰弱か何かの療法に脊柱せきちゅうに沿うて冷水を注ぐのがあったようであるが、自分の場合は背筋のまん中に沿うて四五寸の幅の帯状区域を寒気にさらして
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ひょいと島田髷しまだまげを前へ俯向うつむけると、脊柱せきちゅうの処の着物を一掴ひとつかみ、ぐっと下へ引っ張って着たような襟元に、さきを下にした三角形の、白いぼんのくぼが見える。純一はふとこう思った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
頭は西洋かぶとのような形をし、胸及び腹のひれは、赤児の腕の先に羽がついたような怪異な恰好かっこうになっている。更に著しい特徴は、脊柱せきちゅうがずっと尾鰭おびれの真中をつき抜けて伸び出ていることである。
しかしその眼玉は人間のように二個ではなくて、三個であった。その三個の眼玉の間隔かんかくはたいへん離れていて脊柱せきちゅう(もし有るならば)を中心として約百二十度ずつ開いた角度のところに嵌まっていた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうして危険になったら脊柱せきちゅうに針を刺して水を取ったりいろいろのことをしなければならないそうである。
鎖骨 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その曲がった脊柱せきちゅうのごとくヘテロドックスなこの老学者がねずみの巣のような研究室の片すみに、安物の籐椅子とういすにもたれてうとうととこんな夢を見ているであろう間に
野球時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なんでも紙撚こよりだったかわらきれだったか忘れたが、それでからだのほうぼうの寸法を計って、それから割り出して灸穴きゅうけつをきめるのであるが、とにかく脊柱せきちゅうのたぶん右側に上から下まで
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)