ぶと)” の例文
狭心症にかかっているせいか、一寸ちょっとした好奇心でも胸がドキドキして来そうなので、便々たる夏ぶとりの腹を撫でまわして押鎮おししずめた。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
模様を見て来た彼はまた彼で、こぶとりの身体に丸い顔をほころばしていた。お内儀かみさんの云うことを単純に信じて来た彼は屈托くったくなげに云った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その背後にこの家の娘でもあろう、十八、九の小ぶとりの可愛らしい娘が、好奇の眼を張って立っていた。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ぶとりに肥つた大きな禿頭の男は、小學校と斜めに往來を距てゝ、丁度小學校の附屬舍宅のやうに見える位置に、小學校と同じ白堊造りの西洋館を建てゝ、唯一人住んでゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
と声を掛ると、おつぎさんは酸漿ほおずきを鳴しながら、小ぶとりな身体を一寸ゆすって
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だから来年に近附いて来た結婚に対する彼の期待は、彼の極めて健康な、どちらかといえば脂肪ぶとりの全身に満ち満ちていた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)