ぬいとり)” の例文
しょうの音が起って騒がしかった堂の中が静かになってきた。ぬいとりのある衣服を着てかつぎをした女が侍女に取り巻かれて出てきた。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あたしのためには都合がいいんですよ。自分の気が向いた時に、その支度のほうは、ぼつぼつやればいいんでしょう。今週は襦袢のぬいとりを一つ、来週はハンケチを
されば帝舜が天子の衣裳に十二章を備えた時、第五章としてこの猴と虎をぬいとりしたのを、わが邦にも大嘗会だいじょうえ大祀たいしの礼服に用いられた由『和漢三才図会』等に見ゆ。
私ものちに見ましたが、何でも束髪そくはつった勝美婦人かつみふじん毛金けきんぬいとりのある黒の模様で、薔薇ばらの花束を手にしながら、姿見の前に立っている所を、横顔プロフィイルに描いたものでした。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
或は花鳥をぬいとりした高価な織物のかかっている室で、王と会談したのであるが、その時コルテスは、モンテスーマをキリスト教に改宗せしめよとの王命を受けていると宣明し
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
開けてみると女のくれた新しい衣服、くつくつたびなど入っていた。黒い衣服もその中に入れてあった。またぬいとりをした袋を腰のあたりに結えてあったが、それには金が一ぱい充ちていた。
竹青 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)