縄墨じょうぼく)” の例文
自ら縄墨じょうぼくつかさどつて一宇の大伽藍がらん建立こんりゅうし、負ひ来りたる弥勒菩薩の座像を本尊として、末代迄の菩提寺、永世の祈願所たらしめむと欲す。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
社会の縄墨じょうぼくを逸した飄骨ひょうこつ精悍せいかんなだけに、よくそれを導けば、天下の良民とはいかなくても、乱に用いて乱を治めるには足る者どもでございます
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町住居などをなさろうというのはやはり浮世の縄墨じょうぼくにはずれた、異を樹てることなのでございますとな。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
利をり、名をむさぼり、犯すべからざるの不品行を犯し、忍ぶべからざるの刻薄こくはくを忍び、古代の縄墨じょうぼくをもってただすときは、父子君臣、夫婦長幼の大倫も、あるいはめいを失して危きが如くなるも
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
実際、女権論者の運動は多くの旧き縄墨じょうぼくを破壊した。然し又同時に新しきものを造り出したのである。偉大なる真の解放運動は単に皮相の自由のみを認めた多数の婦人とおもてを遇はせなかつた。
婦人解放の悲劇 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
孔明が軍馬を駐屯ちゅうとんした営塁えいるいのあとを見ると、井戸、かまど障壁しょうへき、下水などの設計は、実に、縄墨じょうぼくの法にかなって、規矩きく整然たるものであったという。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「世の縄墨じょうぼくそむいたが最後、それ異端者だ、切支丹キリシタンだ、やれ謀反人むほんにんだと大騒ぎをする」「うん、こいつはもっともだ」「今の浮世の有様は、太平無事でおめでたい」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)