まゝ)” の例文
旧字:
昨日は今度く歌舞伎座の茶屋の二階で、「まゝしきなか」の本読みがあつたのだが、そこで彼の振られた役と云ふのは、たゞ「虎」の一役だつた。人の名ではない。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
「別にやつてもゐないが、ざつとこんなもんだ。無資本の工場といふ格さ。現代のまゝとは如何なるものか、まあ、参考に見てくれ。君は、今日は、午前だけかい?」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
気も絶えいらんほどにおどろき惑ひしが、走り還りて泣き叫びつゝ、近隣の人をよびければ、漸く其筋の人も来りて死躰の始末は終りしが、殺せし人のまゝしき中にもあらぬ母の身にてありながら
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
児童こどもなかの遊びにも片親無きは肩すぼる其の憂き思を四歳よつより為せ、六歳むつといふにはまゝしき親を頭に戴く悲みを為せ、雲の蒸す夏、雪の散る冬、暑さも寒さも問ひ尋ねず、山に花ある春の曙
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)