絵蝋燭えろうそく)” の例文
薫々くんくんと匂う糸は香炉こうろのけむりか。二本の赤い絵蝋燭えろうそくの灯があかあかと白髯はくぜんの横顔、頬のクボを描いている。李逵はあさはかにも思い込んだものだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この町の絵蝋燭えろうそくも世に聞えました。もとより仏事に用いるものであります。色糸でかがる手毬てまりも名があります。煙草の道具を売る店を時折見かけますが、旅の者の目を悦ばせます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
いよいよ九段能楽堂の初日、舞台を見ると、シテ柱の前と笛座の横に黒塗りの燭台を置いて、五百目ばかりの大きな絵蝋燭えろうそくが二本、お開帳のように飾ってある。囃子方が橋掛りの真ン中を通って来る。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
南蛮寺なんばんじ絵蝋燭えろうそくは一つ一つふき消されて、かなたこなたからりだされた四、五十人の浪人ろうにんが、いずれも覆面黒装束ふくめんくろしょうぞくになって、荒廃こうはいした石壁いしかべ会堂かいどうへあつまってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほうに大きな絵蝋燭えろうそくをたて、呂宋兵衛るそんべえは、中央に毛皮けがわのしとねをしき、大あぐらをかいて、美酒びしゅをついだ琥珀こはくのさかずきをあげながら、いかにも傲慢ごうまんらしい口調くちょうでいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)