紺緞子こんどんす)” の例文
らっきょう頭をピリリとさせ、金茶金十郎が紺緞子こんどんすえりの胸元を取って思わず床几しょうぎから立ち上ったのはさもあるべきことです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母は机の下をのぞき込む。西洋流の籃製かごせい屑籠くずかごが、足掛あしかけむこうほのかに見える。母はこごんで手をのばした。紺緞子こんどんすの帯が、窓からさすあかりをまともに受けた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まことにお見事……八代さまは、ズシリ、ズシリと歩いて、紺緞子こんどんす二まい重ねのおしとねにすわった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
元来圖書は山三郎をおどす気だから、栗毛の馬に鞍を置き、脊割羽織せわりばおり紺緞子こんどんす天鵞絨びろうど深縁ふかべりを取った野袴のばかまに、旧金森の殿様から拝領の備前盛景びぜんもりかげ国俊くにとしの短刀を指添さしぞえにしてとっ/\と駈けて来る。