糧秣りょうまつ)” の例文
けだし相互の侵略に際して、運び去り得ない一切の糧秣りょうまつと食糧はこれを焼き払い打ち毀すのが一般のならいらしいからである1
彼は番士たちの小屋から、他の三カ所の木戸(一は谷の口、二は谷の両側にあり、万三郎の入ったのは谷尻に当っていた)そして厩と、糧秣りょうまつ庫。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
漢庭の女官を乗せたところの、百両の戦車がその後からつづいてそうしてその後からは糧秣りょうまつの小荷駄が、牛だの豚だの家鶏あひるだのの、家畜の群と共に従って来た。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大メシぐらいの連中を相手に、糧秣りょうまつの補給を引き受けていたんだが、あのころの猪沢はようやっとった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
お島はそのことを、糧秣りょうまつ問屋の爺さんからも聞いたし、その土地の知合の人からも話された。その嫁はお島も知っている、男に似合いの近在の百姓家の娘であった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「さよう、一杯やるのがお好きでしたな。これが好物でしたな。なかなかいける方で!」と、十二杯目のウォートカをほしながら、糧秣りょうまつ官吏の古手がだしぬけにわめいた。
軍属らしいと思ったら報道班員だと言う。仔熊のような眼をもった、恰幅かっぷくのいい男だった。今は海軍の糧秣りょうまつ係の仕事をして居るらしかった。宇治はその男の名に記憶があった。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
爾来じらい、群雄が集まり、兵馬舟船なども厖大ぼうだいになってきたものの、あえて、非道な掠奪りゃくだつはやっていませんから、ここへ来てようやく、庫中の糧秣りょうまつや予備の財もとぼしくなってきています。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいや!」商人の眼はすばやくかがやいた。「糧秣りょうまつや被服を運ぶんだ。」
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「この糧秣りょうまつ倉に燈油があるだろうと思うんです。それを藁やむしろにぶっかけてやればまちがいなしですね」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これも実は糧秣りょうまつ局の役人で、無作法きわまる傍若無人ぼうじゃくぶじんな笑い声を立てる男で、しかも『どうだろう』チョッキもつけていないのである! また誰やら得体もしれぬ一人の男は
その後宇治の隊から兵が四五名盆地に糧秣りょうまつ求めに行った時ゲリラに襲われ、皆殺されたという事件が起った。そのゲリラを手引きしたのがあの報道班員だという噂をあとで聞いた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
柳ヶ崎からおびただしい軍需の糧秣りょうまつや馬匹などを陸上げさせている様子だ。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……そこでも小者や家士たちが右往左往していた。武具の荷や、糧秣りょうまつの山がそこ此処ここに積みあげてあり、黄昏たそがれの濃くなりつつある庭にはあかあかと、篝火かがりびが燃えあがっていた。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
中でも糧秣りょうまつ官吏は、よくも合点がゆかないくせに、誰よりも一番にわめき立て、ルージンにとってしごく面白からぬ処置を提言した。が、そこには素面しらふのものも交じっていた。
連環馬三千騎のうち千頭は山泊やまの捕獲するところとなり、官軍が捨て去った糧秣りょうまつ、よろい、かぶと、武器の一切、ことごとく泊中へ運びこまれ、三日間ぶっ通しの山泊やま祭りの大祝宴にわきかえった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糧秣りょうまつの補給を助けるなど、いろいろの役割の中心になって働くのである。
日本婦道記:萱笠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)