かて)” の例文
「わが君。私情にとらわれて国を亡し給うな。彼にかてを与え、兵をかすは、虎によくを添えて、わざとこの国を蹂躙じゅうりんせよというようなものです」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも後には底抜けて、その破片かけは蒲生家にありとぞ聞えし、俵は米を取れども耗らず、かても乏しき事なし、それ故に名字を改め、俵藤太とぞ申しける。
あるいはまた公力くうりきをもって耕作し、収穫全体を収受するのであるか。田令のうちには、地方官新任の際は秋の収穫のころまでに「式によつてかてを給へ」という一条がある。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
かて温石おんじゃくと凍餓共に救う、万全の策だったのである、けれども、いやしくも文学者たるべきものの、紅玉ルビー緑宝玉エメラルド、宝玉を秘め置くべき胸から、黄色に焦げたにおいを放って
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
景隆支うるあたわずしてのがれ、諸軍も亦かててゝはしる。燕の諸将ここに於て頓首とんしゅして王の神算及ぶからずと賀す。王いわく、偶中ぐうちゅうのみ、諸君の言えるところは皆万全の策なりしなりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かても兵も、こんな申し訳ばかりのものを送ってくるとは何事か、これを眼に見た士卒に対し、どういうことばをもって、よく戦えと励ますことができるかっ。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだけなら何とかこしらえて見ますと言って献った、その海王のかてというは稲で、もとより水に生じ、陸に生きなんだが、この時より内地諸湖の際に植えられたとある。