粗忽者そこつもの)” の例文
私は仮睡うたたねから覚めて飛起きた時、周章あわてて時計を見誤って約束の五時半より一時間早くこの家を訪問した次第である。何という粗忽者そこつものであろう。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
粗忽者そこつものめが、転ンだらなぜその通り申し立て、もしまた、膝に怪我でもしたら、医者の診立書みたてがきをも添えて、申し出ないか。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
粗忽者そこつもの共よ喃。みい。油ではないまるで水じゃ。納戸なんどの者共が粗相そそう致して水を差したであろう。取り替えさせい」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
さて昨日は殿様に御無理を願い早速お聞済きゝずみ下さいましたが、たかすくなし娘は不束ふつゝかなり、しゅうとは知っての通りの粗忽者そこつもの、実になんと云って取る所はないだろうが
心ならずも孝助は立ち退いていって粗忽者そこつものの養父相川新五兵衛に逐一を物語る。
「この粗忽者そこつものめがと、私は御勘気ごかんきを蒙りたいのですが……」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
苅田久之進かりたきゅうのしん粗忽者そこつものという評判である。
粗忽評判記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あましと云はば、かの粗忽者そこつもの
そぞろごと (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
文「わしは本所の業平橋にいる浪島文治郎と云う至って粗忽者そこつもの、此のとも御別懇に願います」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いや、ふたりとも、粗忽者そこつものですから」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)