米噛こめかみ)” の例文
米噛こめかみは興奮にふくれているし——月丸の隙をねらっていたが、微かな不安と、恐怖とがあって、突込んで行けば、抜討を食うかもしれないし
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
まだうぐいすが庭で時々鳴く。春風が折々思い出したように九花蘭きゅうからんの葉をうごかしに来る。猫がどこかでいたまれた米噛こめかみを日にさらして、あたたかそうに眠っている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敬太郎はこの時指洗椀フィンガーボールの水に自分の顔の映るほど下を向いて、両手で自分の米噛こめかみを隠すようにおさえながら、くすくすと笑った。ところへ給仕が釣銭を盆に乗せて持って来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
池上の顔は、真赤に染まって、米噛こめかみの脈が破裂しそうにふくれ上って来た。額に、あぶら汗が滲み出て来て、苦しい、大きい息が、喘ぐように、呻くように、鼻から洩れかけた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
踏むは地と思えばこそ、裂けはせぬかとの気遣きづかいおこる。いただくは天と知る故に、稲妻いなずま米噛こめかみふるおそれも出来る。人とあらそわねば一分いちぶんが立たぬと浮世が催促するから、火宅かたくは免かれぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)