端手はした)” の例文
お政は始終顔をしかめていて口も碌々ろくろく聞かず、文三もその通り。独りお勢而已のみはソワソワしていて更らに沈着おちつかず、端手はしたなくさえずッて他愛たわいもなく笑う。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
奥の間の障子を開けて見ると、果して昇があそびに来ていた。しかも傲然ごうぜん火鉢ひばちかたわら大胡坐おおあぐらをかいていた。そのそばにお勢がベッタリ坐ッて、何かツベコベと端手はしたなくさえずッていた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
というのは聞慣れた小女ちびの声で、然う言棄てて例の通り端手はしたなくバタバタと引返ひッかえして行く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
障子が端手はしたなくガラリといたから、ヒョイとかおあげると、白い若い女の顔——とだけで、其以上の細かい処は分らなかったが、何しろ先刻さっき取次に出たのとは違う白い若い女の顔と衝着ぶつかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)