竜舌蘭りゅうぜつらん)” の例文
旧字:龍舌蘭
池のまわりは岩組みになって、やせた巻柏まきがしわ椶櫚竹しゅろちくなどが少しあるばかり、そしてすみの平たい岩の上に大きな竜舌蘭りゅうぜつらんの鉢が乗っている。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
頭に三角形の鶏冠とさかのある、竜舌蘭りゅうぜつらんの葉のようなヒョロリと長い奇妙な翼をもった灰褐色の鳥が、糸の切れたたこのように沼の上に逆落しに落ちてきて
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
去年竜舌蘭りゅうぜつらんの大輪が咲いたときのさわぎとはまたちがった、大へんな人だかりになるでしょう。
砂漠と仙人掌さぼてん竜舌蘭りゅうぜつらんのすぺいんなんかでは、誰でも或る程度まで体験する感情に相違ない。
い上りから外は、型ばかりだが、それでも庭になっていて、竜舌蘭りゅうぜつらんだの、その他熱帯植物が使われていた。土人が銭に使うという中央に穴のある石が筑波井風つくばいふうに置いてあった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
例えば細藺ほそいをサギノシリサシ、近頃入って来たと思う竜舌蘭りゅうぜつらんをヌスビトノシリサシといい、こまかな針のある「とげそば」という湿地の草の一名を、ママコノシリヌグイと呼んでいる人もある。
これは竜舌蘭りゅうぜつらんの厚い葉の汁から製するそうで、近刊の某誌によれば次のような方法によるという。先ず適当の時期に大きな葉の皮を剥いて髄を露出しておく。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
めざましい焔色ほのおいろに塗り立てたモンテ・カルロ行きの乗合自動車は、橄欖かんらんの林と竜舌蘭りゅうぜつらんと別荘を浮彫りにしてフエラの岬を右に見て、パガナグリア山のすそ纒繞てんじょうする九折つづらおりの道を
歯による恋愛——彼はそれを西南の竜舌蘭りゅうぜつらんの蔭から巴里パリへ移入した。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
剛子は、もう一時間もこうしてひとりでサン・ルームの竜舌蘭りゅうぜつらんのそばにかけている。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鯉は片すみの岩組みの陰に仲よく集まったまま静かにひれを動かしている。竜舌蘭りゅうぜつらんの厚いとげのある葉がぬれ色に光って立っている。中二階の池に臨んだ丸窓には、昨夜の清香のさびしい顔が見える。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なんだか思い出そうとしても、思い出せぬ事があってうっとりしていると、雷の音が今度はやや近く聞こえて、ふっと思い出すと共に、ありあり目の前に浮かんだのは、雨にぬれた竜舌蘭りゅうぜつらんはちである。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
竜舌蘭りゅうぜつらん
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)