突出とっしゅつ)” の例文
「畏まって候」とばかり、張遼の五百余騎は前に立ち、郝萌はうしろに備えて、飛龍の勢目せいもくを形づくり、城門をひらいて突出とっしゅつした。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩は殆ど峭立きったったようにけわしいが、所々には足がかりとなるべき突出とっしゅつこぶがあるので、それを力に探りながら徐々そろそろと進んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ようようにしてかれらは、左門洞百五十メートルくらいの地点にきた、しかし左門洞には、まだ突出とっしゅつした岩壁がんぺきをまわらねばならないのである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
彼方の岸の突出とっしゅつした部分には、この森での唯一の例外として、数本の椿つばきの老樹が、各々おのおの一丈ばかりもある濃緑の肌に、点々と血をにじませて夥多の花を開いています。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
遠く那須野なすの茫々ぼうぼうたる平原を一眸いちぼうに収める事の出来ぬのは遺憾いかんであったが、脚下に渦巻く雲の海の間から、さながら大洋中の群島のように、緑深き山々の頭を突出とっしゅつしている有様は
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ざくろのように赤い切り口、白い骨の突出とっしゅつ、空気をつかんでのけ反った博多弓之丞だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
するとその日、四峡の谷に、鼓角こかくのひびき、旗の嵐が、忽然と吹き起って、一輛の四輪車が、金鎧鉄甲きんがいてっこうの騎馬武者にかこまれて突出とっしゅつしてきた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巡査は安行の死骸を見捨てて、更に底深く降りて行くと、途中には所々に突出とっしゅつした大小の岩がそびえて、天然か人工か知らず、の岩の上には横に低い穴が開かれている。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その突出とっしゅつした部分から、ポタリポタリとしずくが垂れている様な箇所もあった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここは比較的に大きい岩が突出とっしゅつしていて、こけに包まれたる岩のおもて卓子テーブルのように扁平たいらであった。巡査は松明を片手に這い寄ると、穴の奥から不意に一個ひとつの石が飛んで来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曹操は、玄徳と共に、山東の境へ突出とっしゅつして、はるか蕭関しょうかんのほうをうかがった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)