突先とっさき)” の例文
これも牛乳のような色の寒い夕靄ゆうもやに包まれた雷電峠の突角がいかつく大きく見えだすと、防波堤の突先とっさきにある灯台のが明滅して船路を照らし始める。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
足の突先とっさきでスリッパをおもちゃにしながら椅子にもたれる始末ですから、いくら口でやかましく云っても、結局「遊び」と「勉強」とはごっちゃになってしまうのでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その栓から糸のような黄銅しんちゅう針線はりがねが管の突先とっさきまでさしこんであって、管へ墨汁すみしるを入れて字なり何なり書くと、その針線の工合で墨が細く切れずに出る、というだけの物だ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
真赤まっかな火が二つ空を向いて、その背中の突先とっさきにらんでいたが、しばらくするとな。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこまでも人をしのいだ仕打しうちな薬売は流眄しりめにかけてわざとらしゅうわし通越とおりこして、すたすた前へ出て、ぬっと小山のような路の突先とっさきへ蝙蝠傘を差して立ったが、そのまま向うへ下りて見えなくなる。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)