禍根かこん)” の例文
建国以来のかがやきある皇土に、えた文化のかびを咲かせ、永遠の皇民に、われらの子孫に、亡国の禍根かこんをのこして行っていいだろうか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「君にぞ惑ふ道に惑はず」とお言いになった人はすべての禍根かこんを作った方であると、もう愛は覚えずなっているのであるが、そのおりの光景だけはなつかしく目に描かれた。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
全くこれは結果と原因との取違えであって、この通りにして棄て置いても、まだ余裕がありそうだというだけで、実は雀の一族の大繁栄が、隠れたる後代の禍根かこんであることを知らぬのであった。
「新田義貞に、逆賊討伐の朝命をさずけ、あるかぎりな王軍を催して、いまのうちに、禍根かこんちおかねば、百年の後、悔いてもおよばぬ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上皇の院政を支持する公卿と、天皇をようし奉る公卿との対立が、そのわずらいの禍根かこんだった。清盛は、その一掃にかかっているが、根を抜こうとすれば、花を散らす。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
闇夜あんやをついて、総押しに河を渡って夜討ちをかければ、禍根かこんも抜くこともできようが、油断しておると近いうちに、夜が明けてみたら対岸洲股すのまたに、一夜のうちに忽然こつぜん
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついに天下の禍根かこんたらんとする現状を見るにいたっては、もう断じて、ゆるすことはできない
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大坂方の大軍は、年来の禍根かこんであった紀州方面の一掃を目ざして、その日、南へ立った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後、故郷くにに起った禍も皆、自分が残して来た禍根かこんのように責められるのだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
要は、根本からこれらの社会悪と個々の罪のありどころを突きとめ、ふたたびかかる人心の害と不安とが起らぬように、抜本的に、禍根かこんを断ち、もって、政道の公明を期さねばならぬ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いま大坂はお手に入り、積年の禍根かこんはのぞかれ、こうして宇治の清流を、爽やかにそれへ向って御入城あろうという——かかる日に、どうしてそんなおむずかりを起されておいでやら?」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長の眼から諸処の一揆いっきや騒乱の火をながめる時、その地方地方の火の手はみな壁に映っている火事であって、禍根かこんの火もとはまさにここ叡山のうえにあり——と、見さだめたものに違いない。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉宗のあたまにも、くッきり、事件の全貌と禍根かこんのある所がえがかれた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右を、左をして、今この時、なにができようぞ。——古来の英雄どももみな、一時の人心を恐れて、禍根かこんを末代にのこして来たが、信長はその根をぬいてみせる。やるからには、てっしてやる。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雑賀党さいがとう熊野衆くまのしゅう高野山こうやさんなどの法城に巣くう僧徒兵力がみなそれであり、海を越えて、それを指嗾しそうする四国、それを力づける瀬戸島々の海上武族などがあって、禍根かこんは、一朝一夕のものではない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)