砂利道じゃりみち)” の例文
それらの葉簇の下には今は見えないが、快適なベンチのある砂利道じゃりみちが通っていて、それらのベンチにKは幾夏も身体を伸ばしたりしたものだった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
さすがにその静けさを破って声を立てる事もはばかられた。もう十けんというくらいの所まで来た時車はがらがらと音を立てて砂利道じゃりみちを動きはじめた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
満月の輪廓りんかくはにじんでいた。めだかの模様の襦袢じゅばん慈姑くわいの模様の綿入れ胴衣を重ねて着ている太郎は、はだしのままで村の馬糞ばふんだらけの砂利道じゃりみちを東へ歩いた。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
おもって、のこのこもんの中にはいっていきました。ひろ砂利道じゃりみちをさんざんあるいて、大きな玄関げんかんまえちました。なるほどここは三条さんじょう宰相殿さいしょうどのといって、ぶりのいい大臣だいじんのお屋敷やしきでした。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、突然頭の上で、ごろごろと春のらいが鳴った。仰向あおむいて見ると、空はいつの間にか灰汁桶あくおけきまぜたような色になって、そこから湿っぽい南風みなみかぜが、幅の広い砂利道じゃりみちへ生暖く吹き下して来た。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あまり心細くて、涙が出て、そのうちに砂利道じゃりみちの石につまずいて下駄の鼻緒がぷつんと切れて、どうしようかと立ちすくんで、ふと右手の二軒長屋のうちの一軒の家の表札が
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)