ちら)” の例文
処が彼がちらと何気なしに其巡査の顔を見ると、巡査が真直ぐに彼の顔に鋭い視線を向けて、厭に横柄なのそり/\した歩き振りでやって来てるので
子をつれて (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
忽ち足をばた/\させて蒲團を蹴とばした芳ちやんは眞つ白な兩方の股を弓のやうに踏張つた。と、つ…………………みたいなものがちらと圭一郎の眼に這入つた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「ま、何處どこまで根性こんじやうがねぢくれてゐるのでせう。」と思ひながら、近子はちらと白い眼をひらめかせ、ブイと茶の間の方へ行ツてしまツた。遂々とう/\むかツぱらを立てゝしまツたので。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
満枝は如何なる人かとちらと見るに、白髪交しらがまじりのひげは長く胸のあたりに垂れて、篤実の面貌痩おもざしやせたれどもいやしからず、たけは高しとにあらねど、もとよりゆたかにもあらざりし肉のおのづかよはひおとろへに削れたれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ちらと見たばかりでは何の車とも分らなかった。何でも可なり大きな箱車はこぐるまで、上からこもかぶせてあったようだったが、其を若い土方風の草鞋穿わらじばきの男が、余り重そうにもなく、匇々さっさと引いて来る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
處が彼がちらと何氣なしに其巡査の顏を見ると、巡査が眞直ぐに彼の顏に鋭い視線を向けて、厭に横柄なのそり/\した歩き振りでやつて來てるので
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)