眉色びしょく)” の例文
三名はさっと眉色びしょくを変えた。わけて伝五は唇のあたりの筋をひっ吊るようにふるわせて、つとその膝へつめ寄った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、その兄が、酒興ではなく、大勢のまえで、こう苦悶するのを見、何でわれわれに否やがあろう、と一せいに、兄の恋を励ますような眉色びしょくをたたえた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さして眉色びしょくもうごかさない半兵衛重治しげはるも、いまは子どもの首一つ求めて、それにかなう領下の者の子を見かけても、どうしても斬って帰ることができなかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戴宗の報告を聞きすました満座の眉色びしょくは、一瞬、しいんと恩人の受難をいたみ、また鬱々うつうつたる義憤に燃えた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこやら自嘲をふくむようなご眉色びしょくの下に、広縁へ出、そのままずかずか車寄せの上に姿を見せられた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし短檠たんけいの光に照らされたその風貌ふうぼうをみるに、色こそ雨露うろにさらされて下人げにんのごとく日にやけているが、双眸そうぼうらんとして人をるの光があり、眉色びしょくうるしのごとく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じつは高氏も、不用意に見せた眉色びしょくの捨て場に困っていたしおである。すぐおもてをやわらげて
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やや憤然たる眉色びしょくさえ見せて
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)