相応ふさは)” の例文
旧字:相應
ひもも、紙鳶に相応ふさはしい太いいとだし、それがかれてあるわくも、子供では両手で抱へてゐなければならぬ程、大きな立派なものである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
異国に渡りて碧眼奴あをめだまどもを切り従へむこそ相応ふさはしけれと思ひ定めつ。渡船の便宜よすがもがなと心掛けりくうち、路用とても無き身のいつしか窮迫の身となりぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
菩提樹神のむかしは知らねど、腕を組み言葉を交へずとも、松心あらば汝も我を友と見よ。僧青松の蔭に睡れば松老僧の頂を摩す、僧と松とは相応ふさはしゝ。我は汝を捨つるなからん。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
蹂躙つたといふよりも、踏潰したと言つた方が相応ふさはしかつたかも知れない。若い男はその一瞬間自分の身体ぢゆうが、女の足の裏で鯛煎餅たひせんべいのやうに平べつたくなつたやうに思つた。
母様いたく喜びたまひて、幸ひ近き今川小路に、相応ふさはしき家ありしを。これも母様の店請たなうけとなりて借り受けたまひつ。いづれに我を嫁入らすべき方様に、入らぬものいりかけるでもないと。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
今日の墓参に相応ふさはしくしづかにその心を繞つた。
草みち (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)