直侍なおざむらい)” の例文
下では、「へい、さようなら成田屋の河内山こうちやま音羽屋おとわや直侍なおざむらいを一つ、最初は河内山」と云って、声色こわいろを使いはじめた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
或いは直侍なおざむらいかむりというやつで、相当江戸前を気取ったところの、芝居気たっぷりのかむり方でありました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
丑松うしまつに別れる直侍なおざむらいのようなことを言うと、そのままピューッと今松は真一文字に駆け出していった。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
あなたはお芝居が好きだから、河内山こうちやまの狂言を御存知でしょう。三千歳みちとせ花魁おいらんが入谷の寮へ出養生をしていると、そこへ直侍なおざむらいが忍んで来る。あの清元の外題げだいはなんと云いましたっけね。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
北の海なる海鳴うみなりの鐘に似て凍る時、音に聞く……安宅あたかの関は、このあたりから海上三里、弁慶がどうしたと? 石川県能美郡のみごおり片山津の、直侍なおざむらいとは、こんなものかと、客は広袖どてらの襟をでて
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もしも、大阪弁を使う弁天小僧や直侍なおざむらいが現れたら、随分面白い事だろうと思う。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
二番目は「河内山」で蝶昇が勤めた。雷蔵の松江侯と三千歳、高麗三郎の直侍なおざむらいなどで、清元きよもとの出語りは若い女で、これは馬鹿にまずい。延久代という名取名なとりなを貰っている阿久は一々節廻しをけなした。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
切られ与三よさの、直侍なおざむらい