目端めはし)” の例文
最初のうちこそ敵意を持つてゐたが、惡醉さへしなければ目端めはしく蟒は、誰にもへだてを忘れさせ、全く水入らずの會合となつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
サト子のほうへは目端めはしもくれず、庭の百日紅さるすべりの花をながめながら、大人物の風格で悠然と朝の食事をすませると、女中に食器をさげさせた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
目端めはしの利くところから、主人に可愛かわいがられ、十八までそこの奥向きの小間使として働き、やがて馬喰町ばくろちょうのある仕舞しもうた家に片着いたのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
地方の人が多かった。それにくらべられるためか、復一は際だった駿敏しゅんびんで、目端めはしの利く青年に見えた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
よく三人の柄にはまった役割りで、大次郎は武を好み、佐助は、顔は二た眼と見られない醜面の生まれつきだが、おそろしく目端めはしがきいて、利に速い、これを商才に用いたら
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「敵の作戦計画がっとも分らない。もう少し目端めはしかせる必要があるだろう」
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
むろん福太郎の配下うけもちではなかったが、目端めはしの利くシッカリ者だったのに、思いがけなく落盤に打たれてズタズタに粉砕されたという話を、福太郎はタッタ今、通りすがりの坑夫から聞かされていた。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
どういう了見りょうけんか侍のくせに、遊女屋の主人となって、目端めはしや才覚もくところから、伏見城の徳川家へ手づるを求め、江戸移住の官許を取って、自分ばかりでなく、他の同業者にもすすめて、続々と
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
警戒しなかった安達君は目端めはしかない。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)