盗棒どろぼう)” の例文
一例として日本人が正直であることを述べてあるが、私はかかる一般的な記述によって、日本に盗棒どろぼうがまるでいないというのではない。
祖母はいちはやくそれを見つけて、私の懐の中から本をひったくった。そしてまず「この盗棒どろぼうめ!」と私を盗棒扱いにしてこう続けた。
松林の間を盗棒どろぼうのやうな素早さで脱けて行く田上の後を追つて、三人がまつしぐらに駆け出して行くと、街角の鍛冶屋と煙草屋の店から
まぼろし (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
伝通院地内でんつういんちない末寺まつじ盗棒どろぼう放火つけびをした。水戸様時分に繁昌はんじょうした富坂上とみざかうえの何とか云う料理屋が、いよいよ身代限しんだいかぎりをした。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
これには大庭家でも大分苦情があった、ことにお徳は盗棒どろぼうの入口をこしらえるようなものだと主張した。が、しかし主人あるじ真蔵の平常かねての優しい心から遂にこれを許すことになった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
盗棒どろぼうはびっくりして、落つかないおしりを布団の上にのせたが、お茶を出されてモジモジした。
彼の鋭くとがった神経は針でも通されたように、彼を冷たい沼の水のような現実に立ち返らせた。が、彼は盗棒どろぼうに忍び込まれた娘のように、本能的に息を殺しただけであった。
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「ぢやあ盗棒どろぼうがきたら?」
そり(童話) (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
「おれたちを月給盗棒どろぼうみたいに考えることは、まるで違ってるってことをハッキリ思い知らせた方がいいだろうよ」彼は、何だかほんとうに、人間として、労働者として、たっとい犠牲的な
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
或る、屋敷へ盗棒どろぼう這入はいって、母の小袖こそで四五点を盗んで行った。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
盗棒どろぼう、盗棒、盗棒——」
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)