疑心暗鬼ぎしんあんき)” の例文
彼等には一つも証拠というものがないではないか。それは単に疑惑に過ぎぬ。いやひょっとしたら彼自身の疑心暗鬼ぎしんあんきかも知れないのだ。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いやひょいとすると、それ等の小事件は赤外線男に対する疑心暗鬼ぎしんあんきから出たことで、本当の赤外線男の仕業ではないのじゃないか。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つまり疑心暗鬼ぎしんあんきとかいう譬えの通りで、怖いと思っているから、少し怪しい奴が立ち廻ると、それが金蔵らしく思われるのです。
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
疑心暗鬼ぎしんあんきとでもいおうか、場合がばあいなので、忍剣には、どうも今の六部の挙動きょどうがあやしく思えてならない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤塚では二人の伜の變死したのを、この山浦甚六郎のせゐにして居るさうだが、飛んでもない事だ。それは疑心暗鬼ぎしんあんきといふものだ——自分の罪に責められる愚人ぐじんの惱みだ
疑心暗鬼ぎしんあんきから、ついそこへ参ったというのは、理窟りくつでは説明の出来ない、何かの感応があったのでございましょうか。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
信雄卿の家臣の疑心暗鬼ぎしんあんきより出たものじゃと、反駁はんばくする宝寺城の人々の云い分とが、双方、声を大になすり合うているうちに、世間の方は、いきさつにかまわず
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中にまじっていた卜斎ぼくさいは、そういぶかしく思ったが、それをあやしむ彼自身じしんが、すでにみょう錯覚さっかくにとらわれて、疑心暗鬼ぎしんあんき眼底がんていにかくしていたことを知らなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
では、この二つの妙な出来事は、全く二郎の疑心暗鬼ぎしんあんきであったかと云うに、必ずしもそうではないことが、翌日、翌々日と日がたつにつれて、段々ハッキリして来た。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平家の門葉もんようの端くれへけられてしまうかも知れない——という疑心暗鬼ぎしんあんきも手つだってくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、君臣のあいだの疑心暗鬼ぎしんあんきは、ふところの敵である。ひいては藩全体の病患ともいえる。これをすには名医のごとき老練と政治的な果断がる。——家康はまだ若い。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深恨断腸しんこんだんちょう、三代の呉をそむいて麾下きかに降らんとするにあたり——もし日限を約して急に支障を来し、来会の日をたがえたなら、丞相の心はたちまち疑心暗鬼ぎしんあんきにとらわれ、遂に
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暗さは暗し、双方とも疑心暗鬼ぎしんあんきに襲われているところである。——当然、大衝突を起すと共に、かつての戦史にも見られない程な——酸鼻さんびな同士討ちを徹底的に演じてしまった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いうような疑心暗鬼ぎしんあんきのうわさが、諸国にみだれ飛んでいるくらいだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、みな疑心暗鬼ぎしんあんきにとらわれて、へんを、家康へ告げた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疑心暗鬼ぎしんあんき
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)