甲戌きのえいぬ)” の例文
甲子きのえねを一とし乙丑きのとうしを二とすれば甲戌きのえいぬは十一であり丙子ひのえねは十三になる、少しめんどうなだけに、それだけの長所はあるのである。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
祖父のものは、俳諧はいかい連歌れんがか何かを記入したものであつたが、父のものには、『品々万書留帳しなじなよろづかきとめちやう』といふ、明治七甲戌きのえいぬ年二月吉日にこしらへたものである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
甲戌きのえいぬの歳も押詰って、今日は一年のドンじりという極月ごくげつの卅一日、電飾眩ゆい東京会館の大玄関から、一種慨然たる面持で立ち現われて来た一人の人物。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
(前略)とし辛巳かのとみ十二月廿一日癸酉みづのととりの日、穴穂部間人あなほべはしひとの母后崩じ、明年二月廿二日甲戌きのえいぬの夜半に太子こうず。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
去年が「甲戌きのえいぬ」すなわち「いぬの年」であったからことしは「乙亥きのとい」で「の年」になる勘定である。こういう昔ふうな年の数え方は今ではてんで相手にしない人が多い。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)