生暖なまあたゝか)” の例文
まろの頭にぼんやり残って居るものは、生暖なまあたゝかいふところに垂れて居た乳房の舌ざわりと、甘ったるい乳のかおりばかりだ。
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うち這入はいると足場あしばの悪い梯子段はしごだんが立つてゐて、中程なかほどからまがるあたりはもう薄暗うすぐらく、くさ生暖なまあたゝか人込ひとごみ温気うんき猶更なほさら暗い上のはうから吹きりて来る。しきりに役者の名を呼ぶ掛声かけごゑきこえる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
近頃は生暖なまあたゝかくて障子一と重だから、意地が惡くその惡ふざけが、町内何處からでも見えるんださうで、——ね、親分。その築山つきやまの上に立つと、植込みの上から、主人の部屋は眞つ直ぐに目の前でせう。