琴瑟きんしつ)” の例文
前年木下(友三郎)博士予の宅に来りこの琴瑟きんしつ和調の体を羨み鎌田に語ると、大分参って居ると見えるといったと『伏虎会雑誌』に出た由。
よく干したものを削って耳掻きに一杯飲むと、身体自ら熱温を生じ性気昂進して、琴瑟きんしつ相和するところの奇薬であるという。
海豚と河豚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
金田君には御目に懸った事はないが、まずあの細君をうやうやしくおっ立てて、琴瑟きんしつ調和しているところを見ると非凡の人間と見立てて差支さしつかえあるまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちに、兄夫婦の間に可愛らしい子供ができて、琴瑟きんしついよいよ相和すというありさまだった。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
相当って居り、琴瑟きんしつこまやかに相和して人もうらやむ中であったろうことは思いやられるのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
通し駕籠かごで江戸まできて、生涯に一度、また通し駕籠で郷里を訪れただけの祖母との新世帯しょたいは、それでも琴瑟きんしつ相和したものと見えて、長吉のしめている帯は、祖父が仕立て
抽斎の六女水木みきはこの年馬役村田小吉むらたこきちの子広太郎ひろたろうに嫁した。時に年十八であった。既にして矢島周禎が琴瑟きんしつ調わざることを五百に告げた。五百はやむをえずして水木を取り戻した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
読書木魚もくぎょ琴瑟きんしつ等ノ声もっとも然リトナス。鳩ノ雨ヲ林中ニビ、雁ノ霜ヲ月辺ニ警シメ、棊声きせいノ竹ヲ隔テ、雪声ノ窓ヲ隔ツ。皆愛スベキナリ。山行伐木ノ声、渓行水車ノ声ともニ遠ク聴クベシ。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
宗矩と琴瑟きんしつが和しているかいないかも分らないほど奥まった所に生活しているが——まだ若いし、そうした深窓にいる女性だけに——良人の身辺にお通のような女性が現われたことは、決して
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なる程。そんな事で、とにかく琴瑟きんしつ相和あいわしていた訳ですな」
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
勿論琴瑟きんしつ相和した。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
して見ると寒月君の代りにこの泥棒を差し出しても必ず満身の愛を捧げて琴瑟きんしつ調和の実を挙げらるるに相違ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相性というか、琴瑟きんしつ相和してという文字どおり仲がよい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)