玉簾たまだれ)” の例文
家臣と雖も男子は禁制されていた玉簾たまだれの奥ふかきあたりへ座頭ばかりは自由に出入を許されていたのである。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此消息このせうそく人目ひとめせきはヾかりもなく、玉簾たまだれやすやすえて、るは邂逅たまなる令孃ひめ便たよりをさとし日毎ひごとるばかり、事故よしありげなるこヽろそこも、此處こヽにはじめて朧々おぼろ/\わかれば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
翌十二日は天狗岩、野立岩、七ツ岩を賞し、門前、古町、木の葉石、畑下はたおり、須卷、小太郎ヶ淵、玉簾たまだれの瀧、鹽の湯等を見めぐつて、晝過ぎに西那須發車、夕暮上野着、この三泊の旅を終つた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
玉鬘たまかずら玉簾たまだれ珠衣たまぎぬなどというのがありますが、これらはかたちのよさをほめ、清らかさをほめる言葉でありますから、それとおなじように、清水をも玉水、玉の井、玉川などとほめるのです。
明くる日お天氣になつたから、玉龍さんと三人で玉簾たまだれの瀧へ行つて見たの。方々、水が往來を流れてゐて面白かつたわ。玉簾の庭はめちやめちやなの。瀧はいつもの倍の倍位大きくなつてゐるのよ。
梅龍の話 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
しんざん深山の花は野のはなよりもかおりがたかいと申しますが、春はお庭にきて啼くうぐいす、あきは山のにかたぶく月のひかりよりほかにうかゞうものゝない玉簾たまだれのおくのおすがたを
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たとい夫の左大臣は亡くなられても、矢張母は自分などの手の届かない雲の上の人、高貴の家の後室こうしつとして多くの人にかしずかれつゝ、立派な居館の玉簾たまだれの奥に朝夕を過しているものと想像された。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)