きちが)” の例文
さればこそ花見の時と同じやうに、いゝ歳をしてきちがひじみたメリンス友禪の袖を飜してゐるのであらう。
二月堂の夕 (旧字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「矢っ張り監視を受ける丈けのことはしているんだね。君は若い時分からきちがみずが好きだったからなあ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「見ておくがいいよ。モナ・リーザ嬢フロイライン・モナ・リーザが、いまゲラゲラときちがい笑いをしているんだ。ダ・ヴィンチ先生のせっかくの傑作も、ああもだらしなく、吹き出すようじゃおしまいだね」
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこで、忌々いまいましい余りに、きちがいぬを、斬ッて捨てたというわけだが、しかし、それからはなお怏々おうおうとして胸が晴れない。聞けば、善信は、あれから間もなく、またこの都へ帰っているそうだな
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな風に唐突だしぬけに知りあうようになって、しかし互いの性質も境遇も知るまもなく、いきなりきちがいじみた恋人同士になった過程について、世間の人は、この上なく妾たちを軽蔑し、それは、妾たちが
華やかな罪過 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)