犬侍いぬざむらい)” の例文
さればこそ、武士はもとより、町人百姓まで、犬侍いぬざむらい禄盗人ろくぬすびとのと悪口あっこうを申してるようでございます。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
よしやどれほどのたからささげてこようと、なんでなんじらごとき犬侍いぬざむらいのくされ扶持ぶちをうけようか、たいがいこんなことであろうと、なんじ逃足にげあしへ遠矢をたのはかくもうすそれがしなのだ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、そうはならぬ。命ならいかにもちょう。家の重宝は命にもえられぬ」と蜂谷は言った。「誓言を反古ほごにする犬侍いぬざむらいめ」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀をこうとした。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「だれが、穴山あなやまさまのような、けがらわしい犬侍いぬざむらいのあんないになど立ちましょうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父じいさま(信玄しんげん)の時代より、武田家たけだけろくみながら、徳川とくがわ軍へ内通したばかりか、甲府攻こうふぜめの手引きして、主家しゅけにあだなした犬侍いぬざむらい。どのつらさげて、伊那丸の前へでおった、見るもけがれだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)