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いぬざむらい
さればこそ、武士はもとより、町人百姓まで、
犬侍の
禄盗人のと
悪口を申して
居るようでございます。
よしやどれほどの
宝を
捧げてこようと、なんで
汝らごとき
犬侍のくされ
扶持をうけようか、たいがいこんなことであろうと、
汝の
逃足へ遠矢を
射たのはかくもうすそれがしなのだ
「いや、そうはならぬ。命ならいかにも
棄ちょう。家の重宝は命にも
換えられぬ」と蜂谷は言った。「誓言を
反古にする
犬侍め」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀を
抜こうとした。
「だれが、
穴山さまのような、けがらわしい
犬侍のあんないになど立ちましょうか」
お
祖父さま(
信玄)の時代より、
武田家の
禄を
食みながら、
徳川軍へ内通したばかりか、
甲府攻めの手引きして、
主家にあだなした
犬侍。どの
面さげて、伊那丸の前へでおった、見るもけがれだ。