ひとや)” の例文
そんな自然のひとやにも近いものの中に、菜穂子は何かあきらめ切ったように、ただ一人でくうを見つめた儘、死のしずかに近づいて来るのを待っている。——
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ながひとやつながれし人間ひとの、急に社会このよへ出でし心地して、足も空に金眸きんぼうほらきたれば。金眸は折しも最愛の、照射ともしといへる侍妾そばめの鹿を、ほとり近くまねきよせて、酒宴に余念なかりけるが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)