煮炊にた)” の例文
盆の終りに際して、少年が小屋をかけ、または屋外で煮炊にたき食事をする風があるか。また綱曳つなひきその他のこの頃に限る習わしがあるか。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見事な廊下で、男の手だけで煮炊にたきをするやら、洗濯をして松の木にほすやら……当家の主人は、こっち側とばかり、梃子てこでも動かぬ気組み。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大名は滅多に他所よそ煮炊にたきした物を食べません。茶店から貰ったのは、熱い湯と、生みたての鶏卵たまごだけ。
で、昨日から、六波羅兵と放免ほうめん(密偵)どもの、煮炊にたきの跡や馬糞やらで、そこは狼藉ろうぜきを極めていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今ではあの辺でもあまり耳にしないが、もとは台所を御水屋おみずやといっていたので、それで煮炊にたきの真似を御水屋事おみずやごとといい始めたのであろう。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれど、煮炊にたきはできない、香の物の刻み方は知らないというような奥方ではなかった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
カマクラと称する秋田県の雪小屋などは、以前の鳥追歌とりおいうた御火焚棒おほたきぼうがまだ残っているにもかかわらず、今では女の火鉢ひばちなんか持込もちこんで、静かに煮炊にたきをして楽しむ場所になっている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それを旅籠はたごで借りた鍋釜で煮炊にたきする。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)