焦々じりじり)” の例文
いわゆる無為むい空日を過していたのだ。信長が、いかにこの間を、焦々じりじり思っていたことかは、今、その譴責状けんせきじょうとなってから、初めてみな
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平一郎の唯一つの望みは和歌子からの手紙になってしまった。学校から帰ると彼はお光に「手紙は来ていないか」と怒鳴った。手紙は来なかった。彼は焦々じりじりした。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
少し焦々じりじりしているらしい検使に、たった一と言で止めを刺されてしまいました。
津村記者は全身にジットリと汗をなが焦々じりじり後退あとじさりをし始めた。
と、前線の長陣を、焦々じりじり思っているかも知れないし、また日頃、秀吉にこころよからぬ周囲の者どもも
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう呟いた山陽の心には、厖大ぼうだいな稿本の八九分どおりまで校正の朱筆に染まって、あともう僅かな所もみ疲れかけている日本外史の業が、陣痛のように、焦々じりじりと悩んでいた。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただの一日でも西門慶の愛撫がなければ焦々じりじりしてきて、いても起ってもいられない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行軍からは落伍するし、馬は起たないし、汗だくになって、焦々じりじりしていた歩卒は
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり焦々じりじり、髪の根をかんざしで掻く金蓮の思いは、無性につのるばかりだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
錠口じょうぐちにひかえて、元康の立坐を待っている榊原平七は、家来の身でも、余りなと、焦々じりじり思っていたが、元康は根気よく、彼女の不審の解けるまで、なだめたり説いたりして、やがてようやく
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時々、焦々じりじりして、怒鳴りつけることもあったりしたが、そういう時でも
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分があんな苦心をして一方を誘ってきたのは一体なんのためかと歯がゆくもなり焦々じりじりと思うのでもあったが、夜が白みかけては一大事をかもおそれがあると、姫にかわって次に来る夜の言質げんちをとって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は焦々じりじりする。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)