濡手拭ぬれてぬぐひ)” の例文
仕方しかたがないから、今朝けさあげた蒲團ふとんまたしてて、座敷ざしきべたまゝよこになつた。それでもえられないので、きよ濡手拭ぬれてぬぐひしぼらしてあたませた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えれえ、えれえ。それでもぬるけりや羽目はめをたゝけ、」とひながら、濡手拭ぬれてぬぐひを、ひとりでに、おもはず向顱卷むかうはちまきで、せつないかほしてなみだをほろ/\とこぼした。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
濡手拭ぬれてぬぐひを持つて居るところを見ると、町内の錢湯へ行つた歸り、夜遊びに出たおろかな伜と一緒になつたのでせう。
富岡は切ない気がして、額の濡手拭ぬれてぬぐひを時々裏返しにしてやつた。明日を待つて、もしいけないやうだつたら、比嘉へあてて、電報を打つてみようと思つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
そんな問答をしてゐる時、もうかげりかけた日陰ひかげを拾ふやうに、濡手拭ぬれてぬぐひをさげて、兄の清次郎が歸つて來ました。
「湯屋の前で若い女と立話をして居たのを見た者がありますが、濡手拭ぬれてぬぐひをブラ下げての駈落は珍らしい」
お吉が下手人なら、濡手拭ぬれてぬぐひへわざと泥を附けたまゝにして置くよ。お吉は本當に風呂屋の入口で自分の手拭を拾つたから、女らしい心持で、その晩騷ぎの最中にも手拭の泥を洗つて置いたんだらう。