湯治場たうぢば)” の例文
云はぬが花と実入みいりのよい大尽客だいじんきやく引掛ひつかけに、旅に出るのもありやうは、亭主の為めと夕暮の、涼風すずかぜ慕ふ夏場をかけ、湯治場たうぢば近き小田原をだはらで、宿場稼しゆくばかせぎの旅芸者、知らぬ土地故ゆゑ応頼おうらい
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
陽氣やうきで、障子しやうじ開放あけはなしたなかには、毛氈まうせんえれば、緞通だんつうえる。屏風びやうぶ繪屏風ゑびやうぶ衣桁いかう衝立ついたて——おかるりさうな階子はしごもある。手拭てぬぐひ浴衣ゆかた欄干てすりけたは、湯治場たうぢばのおさだまり。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それが不圖ふとしたことからある近親みよりの人の眼を患つて肥前小濱をはま湯治場たうぢばに滯留してゐた頃、母と乳母とあかんぼとはるばる船から海を渡つて見舞に行つた當時の出來事だということがわかつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)